『最初に父が殺された』を読んで、カンボジアのポルポト時代を知る

かなえ
アンコールワットにはなぜ傷があるのか、ポルポト時代とは何だったのかがわかる、カンボジア旅行へ行く前に読むべきおすすめの本です。
本の紹介

『最初に父が殺されたーあるカンボジア人少女の記憶』ルオン・ウンさん

本はカンボジアで大虐殺が行われた1970年代のポルポト時代、幼かった作者が経験した実話です。Netflixでアンジェリーナ・ジョリーさんが監督を務め、映画化もされています。


カンボジアの歴史を知る

悲惨な過去はたった約45年前

カンボジアはポルポト以前、豊かな国だったと筆者は言っています。特に都市のプノンペンは発展しており、テレビや車など、近代的なモノが溢れている社会でした。しかし前政権が倒れ、ポルポト率いる共産党が実権を握ると、状況は激変します。

西洋的なものを一切否定し、人々に究極の平等を強いましたプノンペンに住んでいた人は田舎へ強制移住・労働させられ、学校は禁止され、通貨を廃止し富はすべて没収されました。近代的なものはすべて、時計なんかも壊されたそうです。そして反抗勢力を徹底的に排除するため、医者や教師、前政権の官僚、留学生などの知識人は身分がバレれば、問答無用で殺されました。さらに食料の配分は非常に少なく、病気や飢餓で死んだ人も多いです。現在最も正しいとされている死者数は200万人弱、当時人口の4分の1と言われています。

 

ポルポトとは
クメール・ルージュという共産党の最高指導者です。しかし、筆者によると、テレビもラジオも本も禁止されたので、当時ポルポトがどのような人物であるのか、皆全くわからなかったそうです。なぜ彼が実権を握ることになったのか。この本では、ベトナム戦争でアメリカが北爆を実行すると、国境近くのカンボジアの村にも爆撃の被害があり、アメリカ=民主主義に反対する百姓の支持を受けたと書かれています。
アンコールワットとは
12世紀にクメール王朝が立てた寺院の遺跡。広大な遺跡だが、長期間森に埋没しており、1860年にフランス人研究者が再発見し有名になりました。しかしポルポト時代に宗教を信じることが禁じられ、アンコールワットも兵士によって傷つけられました。

あらすじ

首都・プノンペンに家族9人で住んでいた作者の家族は、とても裕福に暮らしていました。お父さんが前政権の下で働いていたので、日本のマツダの車に持ち、家政婦を雇うなど豊かだった時代から描かれています。

しかし事件は起こります。ある日突然、兵士がプノンペンにやってきて、「ここにはもう住めない。全員田舎に行け」という命令が出ます。家族は田舎の親戚の家まで向かいますが、その後どんどん事態は悪化していきます。厳しい労働と、食料のなさ。父が前政権で働いていたことがばれないように、家族以外の人とは話さない。筆者はまだ一桁の年齢で、周りの人が次々に死んでいくのを目の当たりにします。

悲劇は次々と起こります。タイトルからお父さんが殺されたことは明らかですが、他の家族の死、数年もの間飢餓で苦しむ、爆撃で唯一の友達が、隣で頭から脳みそが流れ出るように死んでしまう、、、想像を絶することが起きていきます。

感想とまとめ

こんな地獄が地球上にあったのか、しかも70年代に、、と驚愕してしまう作品です

地獄という表現の中には

✔️いつ自分が、また自分の家族が殺されるかという恐怖を毎日持ち続けて生きること。

✔️銃で殺されるという辛さだけじゃない。3年もの年月を餓死寸前で過ごしたこと。

✔️幼い子供が、この状況の中で生きる気力は、「いつか私たちを苦しめたポルポトを殺してやる」という憎しみの動機だけだったこと。

などたくさんの意味が込められています。

 

また作者のルオンさんの表現、言い回しは、読む人を離さない、独特な雰囲気があります。

「多くの人が飢餓で亡くなった。」「知識人は政府に反抗する可能性があったから最初に殺された。」世界史の教科書ではピンとこなかったこれらの記述が、この本を読むと自分の身に起きているような感覚に陥るのです。

「アンコールワットって何で傷があるの?カンボジアの歴史って?」旅行する前に、ぜひ読んでみてください。